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トピックス

お知らせ 2023.08.01
株式会社スープストックトーキョーの取締役に、 工藤 萌が就任いたします。

2023年8月1日付で、株式会社スープストックトーキョーの取締役に工藤 萌が就任いたします。合わせて、ブランディング全般を担当する「価値づくりユニット」部門長も兼任し、「世の中の体温をあげる」という理念の実現に共に取り組んでいきます。

■工藤萌からのご挨拶

このたび、取締役を拝命いたしました工藤萌と申します。
私が思うスープストックトーキョーの強さは、真ん中に「理念」があり、それを歯車のように動かしていく、商品・人・場が有機的に結束し、揺るがないブランドになっていること。理念を神棚に上げて眺めているだけではなくて本気で実現しようと徹底しているところです。私は、この素晴らしいブランドをもっと「世の中ごと」にして公共化していきたいですし、それはブランドが成長すればするほど社会が良くなること、そして働く人たちやパートナーの皆さまの誇りになることだと信じています。その実現に向け、ブランドを築いてこられた方々の想いを学びながら、覚悟を持って取り組んでいきたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

<プロフィール>
2004年株式会社資生堂入社。営業経験後、一貫してマーケティングに従事。
低中価格メーキャップブランドで当時史上最年少ブランドマネージャーを務めた後、サンケアブランドでグローバルブランドマネージャーを務める。
第一子出産を機に2019年バイオテクノロジー企業の株式会社ユーグレナへ転籍し、マーケティング部門の立ち上げやマスターブランド戦略等を実行。事業本部長、執行役員を歴任。2023年3月より株式会社スープストックトーキョー顧問に就任。
2014年JBCC(日本ビジネススクールコンペティション)グランプリ。2017年ADFESTフィルムクラフト部門シルバー他多数。
2023年Advertising Week Asia「Future is Female Awards」ファイナリスト

遠山正道×松尾真継×工藤萌

就任直前の盛夏の合間にここちよい風が吹いた日、中目黒の本社に代表取締役会長の遠山正道、代表取締役社長の松尾真継、そして工藤萌の3人が集まりました。
3人は「工藤さんがなぜスープストックトーキョーに加わられたのか」からはじまり、「何を大切にしているのか」「どんな未来を描きたいのか」を語り合いました。

「Soup Stock Tokyoのスープに救われました」

松尾:工藤さんに最初にお会いしたのは、マーケティング関連の会合でしたね。初対面なのに、「その節はお世話になりました」と、いきなり言われて面食ったという(笑)。

工藤:いやぁ、弱っていた時に救ってもらったのが「Soup Stock Tokyo」のスープだったんですよ。

遠山:えー、そんなことがあったんだ。

工藤:はい。新卒で資生堂に入社したんですけど、営業を経てマーケティングやブランド戦略に携わるようになり、夜間はMBAスクールに通っていたので忙しくしてまして。咀嚼力の衰えた身に、Soup Stock Tokyoの「東京クラムチャウダー」(現在は未販売)が染みました。ほとんど命綱ですよ(笑)。それで思わず「お世話になりました」って。

松尾:そう言ってくれたことで、その後の話が盛り上がっていったよね。さて、でもその前にそもそも資生堂へ行かれたのはなぜだったんですか。

工藤:私の父が民藝運動を提唱した柳宗悦の孫弟子なんです。それで「美しさとは何か」という問いを幼い頃から投げかけられていました。自分なりにその問いを大切にしたいと思っていたというのもあるし、高校生のとき初めてアルバイトをしたお金で買ったのが資生堂の口紅だったというのも大きいかな。買ったのはモノだけど、単なる物理的交換ではなくて、気持ちがふわーっと高揚して。ああ、化粧品にはこういう力があるんだ、自分も誰かをワクワクさせたいと思ったのが志望の動機につながりました。

遠山:若いころからその問いって、お父さんすごい方だね。口紅の話もすごく納得感あるね。

松尾:そうですよね。なぜ、その資生堂を離れる決断をしたのかな?

工藤:仕事は充実していたし、女性をエンパワーメントしていくという喜びもありました。ただ、自分の残された時間とビジネスの力を何に使うべきかという問いが自分の中で膨らんでいったんです。その問いが、変な話ですけど、出産を機に抑えきれなくなってしまって。分娩室でのたうち回って、やっと子どもの顔が見られた瞬間、世のお母さんたちの偉大さを思い知ったと同時に、「世界中のみんなが私の子どもだ」みたいな、なんか変なインスピレーションを得たんです。そこで「直接的に社会課題を解決できるような仕事をしよう」と覚悟ができたんですね。

遠山:これまたすごい話だ。いつも軸がしっかりしているね。

松尾:マーケティングを生かしながら、正しい消費のあり方や未来の在り姿を創っていきたいと言っていたよね。

工藤:そうですね。一番の理想は、売れれば売れるほど社会がよくなるシステムを、自分のビジネスの力で作ること。これからの自分の時間をそれに使っていきたい、社会課題の解決に役立つ仕事をしていきたいと痛切に思いました。

同志を見つけた気分でした

松尾:それでユーグレナへ転職したわけですね。そこではどんな仕事を?

工藤:マーケティングを軸に、ヘルスケアカンパニーのトップとして経営の一翼を担いました。具体的には、マスターブランド戦略やマルチチャネル化の推進など、ビジネスモデルを変えつつ収益をあげることがミッションでした。

遠山:マーケティングのプロが、経営にも関与していくようになっていったんだね。大変な責任だ。
松尾:さっき言った会合で、たまたま席が隣だったんですよね。僕は工藤さんについて、マーケッターとして有名な方という程度の認識しかなかったけど、話をしてみたら驚くほど波長が合ったというか、「一緒に働きたい!」って思えたんです。

遠山:私にも「すごい人を見つけました!」って、興奮気味に報告してくれたよね。具体的にどんなところでそう思ったの?

松尾:ただのマーケティングのプロということなら、きっと話は合わなかったと思うんですよね。けれど、会社を背負う覚悟で経営をやっている。しかも世の中をより良くしたいという想いをまっすぐ仕事で表現しようとしていて、その覚悟とか責任感をひしひしと感じたんですよね。なんか仲間というか、同志を見つけた気分でした。ちょっと興奮して初対面なのに、質問攻めにしてしまったんですけど(笑)。それにも真摯にずっと答えてくれて、言葉の選び方にセンスがあるし、自分とバチバチするくらい熱量があるなって感じたんですよね。

工藤:たしかにめちゃくちゃたくさん質問されましたよね、これって面接か?ってくらい(笑)。でも、そういえば初めてお会いした日の後も、ブランディングや経営とはということについてたくさんやり取りをするようになって、私もその中で松尾さんが真剣にいろんな課題に正面からぶつかって経営をされてきた熱量や、徹底して実現しようとしている理念にすごく共感できるなと思うようになっていきましたね。

お店に行ったら、「ああ、呼吸できた」

松尾:Soup Stock Tokyoを遠山さんが設立したのは1999年。以来24年に渡って多くのお客様に愛していただいていますけれど、個人的にはまだまだだなといつも思っているんです。もっともっと魅力的に成長させなきゃと。例えば、「世の中の体温をあげる」という理念に直結する仕事やコミュニケーション以外は意味がないのに、気付くと目的がなんだったかわからない仕事にみんなが忙殺されていたりする時がまだまだある。それは、リーダーである自分のせいでもあるし、人間誰しもにある「出る杭にならず、型通りのことをやればいい」とか「別に新しいことを考えなくても、前例踏襲でいい」と流されてしまう弱さのせいでもある。描くビジョンへの共感と楽しさで、みんなをあるべき中心に巻き込み続けて、そういう怠惰をも振り払うのがブランドのトップたる自分の仕事だと思うんですね。皆が息をするように「世の中の体温をあげる」を考え、それを実現し続けている組織にしないといけない。一方、お客様には、そんな徹底力の厳かさは感じさせず文化的で自分に向き合うきっかけになる「余白」をブランド全体から感じて欲しい。そういうブランドのトップをやりながら、会社という船のかじ取りをする経営者でもあるので、コロナ禍で傷ついた収益性を回復し、時代にも適合しうるビジネスモデルへの変化や仲間であるステークホルダーとの目標合わせや関係構築も背負っている。ブランディングと経営は、向かうところは一緒なのだけど、全体の規模も大きくなってきた中で、一人の人間だけで全部背負い続けるのは、なかなかしんどいなと感じてたんですよ。チームを創らないとと。

遠山:大変なことを任せているしいつもよくしてくれているから感謝してる。でも、懸命になりすぎちゃうと視野も狭まるし、やっぱりキャッチボールしていく共創とか相手から見える客観性とか必要だしね。

松尾:そうなんですよ。そこで出会ったのが工藤さんなんですよね。これまで社会課題解決やサステナビリティの課題に向き合ってきているし、お父さんに美意識を鍛えられてきたことや文化の香りがすることも、うちの会社にとってはまさに客観性そのもの。でも、だからといって、美しければいい、売れなくてもいいという話では企業が続かないこともしっかりわかっていて、社会人からずっと磨き続けてきたビジネスとしてのマーケティングの武器ももっているわけですよ。しかも、行く場所行く場所で、全てを自分事にして覚悟して仕事して、結果を出し続け、自分のファンをいっぱい作ってもいるわけですよ。いやあ、こんな人初めて会った・・・って感じたのが工藤さんだったというわけです。

工藤:何ですか、そのプレッシャーは(笑)。
松尾:ちょっと煽ったか(笑)。いやでもホントにそう思ってるよ。だから、「忙しいのは分かってるけど、月に数時間でいいからうちも手伝ってくれよ」と頼み込んで、2023年3月にまず顧問になってもらったんですよね。その時点でのSoup Stock Tokyoの印象や、僕が感じていた課題感についてはどう思いました?

工藤:松尾さんから聞かせてもらった話は、組織が大きくなるときにつきものの課題だよなと感じていました。でも、仕事を分け合って信頼しあえる仲間と共にやっていければ手当てできる課題だとも。あとは、それを自分がやっていくのかどうかだなというところでSoup Stock Tokyoのお店に遊びに行かせていただいたんですよね。そしたら、なんかね、酸素を吸ってる感じがしたんですよ。ああ、呼吸できた、みたいな。

遠山:ほう~。

松尾:その言葉はうれしいですよね。

工藤:いま思うと、それはたぶん、遠山さんや松尾さんが大事にされている理念の部分に反応したのかなと。だから松尾さんがいう余白は、ちゃんとお店に存在していると思いました。でも一方で、松尾さんの危惧する気持ちも分かったんです。Soup Stock Tokyoが持つ力はまだまだ底知れないし、もっと爆発できるし、私のように救われる人ももっとたくさんいるはず。ならば、もしかしたら自分にできることがあるかな、という気持ちになってきて、ワクワクしながら顧問をお引き受したんですよね。

個人のきらめきが会社に反映される「ピクニック紀」

松尾:工藤さんはよく、「感じることが大事」って言いますよね。初めて私が仕事する部屋に来てくれた時も「この部屋にはなにか足りないものがある」って言ってて、私がなんども「それって何?」と質問すると、「感じて」って言われたし(笑)。理詰めで考えた先の答えって本当に欲しいものじゃないことのほうが多い。答え探しばかりしてると、一番嫌だなって思う商業寄りになっていって、どんどんやりたいことから離れてく。遠山さんも言語にならない感性をものすごく大事にされてますよね。

遠山:私は最近「ピクニック紀」と言ってるんだけど、これからって仕事のボリューム自体が減っていく時代になると思うんだよね。一日中明かりがついてる不夜城みたいなオフィスってもうないでしょ? これから大事になるのはその人個人の「仕事」「表現」「拠点」「人」で、このうちのいくつかをリンクさせることで、一人ひとりが何かしらの豊かさなり幸福なり価値なりを提供していく時代なんじゃないかって。そうやって個人が自信をつけて自立できるようになると、翻って個人が集まっている会社やそのブランドも魅力的になっていくと思うんだよね。みんなが持ち寄ってくるピクニック。Soup Stock Tokyoも、そのきっかけを作って世の中に還流していくような、そういうインフラになれるといいよね。

松尾:遠山さんが1997年に書いたSoup Stock Tokyoの企画書の、秋野つゆさんのくだりがまさにそうですよね。Soup Stock Tokyoというブランドの性格を見事に言い表している。彼女の理想は、「個性的で魅力的な人、凄い人、圧倒的にチャーミングな人などと出会う事」。そして、「その人たちと共有する考え・感性を具体的な形で社会に投げかけ、個人や、個人の集合である社会に対し、少しでも充実する様な提案をしていく事」。そう書かれているんです。要は、ただ会社に帰属しているだけじゃなくて、自分を磨いてアップデートし続けていたり、何か幅が広がっていくことを楽しんでいたりするわけですよね。そういうことを個人がやっていかないといけない時代だよなと思います。

「しなきゃいけない」ではなく「したいからやる」

工藤:遠山さんのあの企画書は、最高傑作ですよね。もう世界中の企画者に読んでほしい。それくらい秀逸!

遠山:そう?(照れ笑い)

工藤:あの企画書が根本にある、だからこの会社は強いんだなと実感しました。みなさんとの打ち合わせや松尾さんとの話し合いでも、「しなきゃいけない」があまりなくて、「したいからやる」が多いですよね。なのに、ちゃんとビジネスが回っているのがすごい。生活者の興味が短期的になってきている中で、ブランドが変わらなきゃいけないことって多いと思うんですけど、そこをいやいや違う、こっちだぞって引き戻してくれる、力のあるブランドなんですよね。お客さんのことは大事にするんだけど、変な迎合の仕方はしない芯の強さにポテンシャルを感じるし、そこがまさに自分が関わっていきたい理由でもあります。

遠山:やっぱり「自分ごと」じゃないとね。自分たちの発意をビジョンとして設定したのがあの企画書なんだよね。根っこと実現したいものが両方あるからやりやすい。行ったり来たりして、あるルートがダメなら方法論は変えればいいんだから。

松尾:最近、自分たちの根っこを世に問われたのが、工藤さんが顧問になってから起きた「離乳食炎上騒動」でした。Soup Stock Tokyoの全店で離乳食を無料提供すると発表したところ、賛成だけでなく反対の意見も多くいただいて、大きな騒ぎになってしまって。でも、声明文で僕らの理念を丁寧に伝えたことで、多くの方にご理解をいただくことができました。その声明文も、工藤さんと何度も壁打ちして、ようやく出来上がったものだったんです。

工藤:そこは私の貢献というより、やっぱりブランドの初期設計の精度の高さですよ。秋野つゆさんの話がまさにそうで、ブランドがきちんと人格を持っているから、今回のような事態になっても土台が揺るがないんです。

松尾:そう言ってもらえるとうれしいですけど、でもあの渦中で工藤さんが自分ごととしてSoup Stock Tokyoのブランドを考えてくれていることがよく分かって、いっそう信頼感が高まりました。それで、より深くコミットしていただきたいということで、今回の取締役就任となったわけです。

遠山さんはシェイクスピアで、社長の僕は演出家

工藤:私、仕事のなかで「これはどうあるべきなんだっけ」「ここはどうするんだっけ」って、歯を食いしばることって多いように思うんです。でも、Soup Stock Tokyoは同じ問いを立て続けてるんだけど、なぜか軽やかでカッコいい。感性の瑞々しい人が集まっているというのかな。そんなところにも惹かれて、取締役を拝命しました。

松尾:社風が軽やかというのは、遠山さんの性格が影響してると思うな。僕は社長を引き継いだけど、僕の会社っていう感覚はないんですよ。たとえるなら、遠山さんはシェイクスピアで、僕は演出家とかプロデューサー。『ロミオとジュリエット』みたいな不朽の名作があって、そこには人類普遍のテーマが描かれている。その作品がSoup Stock Tokyoだと思っていて。

遠山:ああ、なるほど。

松尾:原作者がやろうとしていたこと、つまり「世の中の体温をあげる」というテーマはずっとそこにある。それを現代の集団芸術として表現する仕事を僕はやっている。だから、社員は皆表現者だし、店は舞台なんですよね。原作の普遍的な価値をみんながどう演じていけるか、そこを現代的にどうアップデートするか、差配するのが僕の役目ってイメージ。しかも、その表現はステージから一方的に流すのではなく、お客様との双方向のコミュニケーションで成立するということも、原作者(遠山さん)は意図していたと思うんです。この集団芸術は、観客も役者というか、受け取った側も考えて自分を良くしていく。そんな風に個人のものから社会のものへと「開いていく」ことを僕はやりたいんですよね。その取り組みを、工藤さんにもぜひ一緒になってやってもらいたいんです。

工藤:(うんうんとうなずく)

遠山:そんな風に考えてくれているのは本当にありがたい。それに、そもそもアートってそういうものだよね。作者と鑑賞者が半分ずつ持ち寄ることで初めて成立する。1つの作品でも10人いれば10の見方があるわけだし、夕陽を見てきれいと感嘆する人もいれば、涙を流す人、昔を思い出す人、いろいろいるでしょう。夕陽は現象でしかないのに、価値を享受する側が価値を自ら作っていく。私がよく言う「生活者が大事」っていうのはそういうことでね。

一見真逆だけど、実は似た者同士の二人

松尾:ちなみにあえて言っておくんですけど、遠山さんと工藤さんでは「マーケティング」に対する解釈が、言葉尻だけとらえると真逆なんですよね。遠山さんは「マーケティングは嫌い」「マーケティングなんていらない」とよく言うでしょ? 工藤さんは「私はマーケッターです」「マーケティングの力で世界をよくしたい」と言う。でも僕は二人と話していて、実は言ってることに違いがない、むしろめっちゃ合うと思ってるんです。

遠山:うん、齟齬は全然ない。

工藤:はい、私も。

松尾:(笑)わかってるんですけど、ちなみに遠山さんはマーケティングをどういう意味合いでとらえてるんですか?

遠山:さっきの発意の話に通じるけど、やっぱり順序としては、こちらから打ち込みたい感じがあるんだよね。

松尾:ですよね。例えば、価値を提供したいなあといいつつ何をしたいか分からない人ってたくさんいて、そういう人は何か調査すると世の中が求めているらしきものが見えた気がして「それだ」って作っちゃう。そういうものには魂が入ってない。だから続かない。つまり、発意を作り出すことにマーケティングは役立たないぞっていう意味で、「マーケティング嫌い」を標榜していると。

遠山:そうそう、そういうこと。

工藤:それはすごい共感します。私にとってマーケティングは「市場創造」なんです。ただ、市場を創るには、お客さんや社会にとってその商品なりサービスなりが、どういう意味や価値を持つのかをブランディングで示さないといけない。いわばブランディングという意味作りを、マーケティングというテクニックで広げていくという、そんなイメージですね。

松尾:発意は価値を創出する側にあって、それを広げていく手段がマーケティングであると。やっぱり工藤さんと遠山さんのスタンスって本質的に同じなんですよね。やっぱり工藤さんはSoup Stock Tokyoに必要な人だなあ(笑)。この会社って、ホントに個人的な発意が事業の根底にありますよね。流行ってるからやろうとかいう考えは微塵もない。

遠山:むしろそういうのは急にやる気なくなっちゃう(笑)。

工藤:そこが素敵なんですよ。自分ごとの事業だからこそ魂を込められるし、弱った人を救える力がこもるんですよね。それは救われた当事者として、すごくよく分かります。

さらに「開かれた」Soup Stock Tokyoへ

松尾:遠山さんが工藤さんに期待することって何ですか。

遠山:そうねえ、言いづらいことをどんどん言ってほしいかなぁ。システムとか合理的なことだけじゃない、大事なことってきっとたくさんあって、でもそういうことは仕事上だと発言しづらいんだよね。だからこそ、そこをズバリと指摘してほしい。
アートでもおいしいものでもそうだけど、心を揺さぶられる体験をしても「きれい」とか「おいしい」って言葉は、気持ちのほんの5パーセントくらいしか表明できない気がするんだよね。でも、その言葉にならない95パーセントの方が実は大事。会社ってどうしても数字が共通言語として流通しやすいのでそこに収斂してしまいがちだけど、感じている大事な要素をうまく言語化するなり、体当たりするなり、抱きしめるなりして、しっかりつかまえてほしい。それがみんなで作り上げていく価値を、よりいっそう洗練させることにつながるんじゃないかなあ。

工藤:その言葉はすごくありがたいですね。自分でも時々ふと我に返るんです。合理性の中で自分を見失っていたり、分かりやすいことだけに視野狭窄を起こしていたりする。でもそうじゃない部分をしっかり議論できることが是とされた会社って、やっぱりみんなにとって幸せだと思うし、価値が生まれる会社だと思います。
それと、Soup Stock Tokyoの価値を世の中でもっと意味あるものにしていくために、Soup Stock Tokyoをもっと公共化していきたいですね。さっきの松尾さんの「開いていく」に重なるのかな。それには資本主義的な合理化された仕組みだけじゃないやり方が適しているだろうから、変わったバックグラウンドを持つ自分だからこそ編み出していけるかなぁとも思ったりして。自分としてもチャレンジだし、楽しみながらやっていきたいですね。

世の中の体温をあげることで利他の心を増やす

遠山:実は、企画書には「インフラになりたい」って書いたんだよね。個人性とインフラって一見対極にあると思われるけど、でも両者がうまい具合に溶け合う事業は実現可能だし、そういうものこそ、やればやるほど個人も社会も良くなっていくと思うんだよね。一人ひとりの生活者が豊かで幸福になれば、それが社会にも循環していくわけで。

松尾:そこが理念につながってるんですよね。具象じゃなくて、お客様の心を豊かにすることが僕らのテーマだから。心の体温をあげるっていう理念を具現化していく、その関係人口を増やしていくことが鍵なんでしょうね。

工藤:インフラとか公共物に問われることって、利他の精神じゃないですか。で、Soup Stock Tokyoって利他の心を持つブランドだと思うんですね。

遠山:うん。

工藤:利他の心って、言われて持てるものじゃなくて、自分を愛せれば自然と備わっていくもの。Soup Stock Tokyoは癒しやインスピレーションによって自分を取り戻せて、世の中の体温をあげることで社会に利他の心を増やしていける、そんなブランドではないのかな。そして、それはサステナビリティや環境問題にもつながっていくはずです。

松尾:ワクワクするなあ。工藤さんを迎えてSoup Stock Tokyoがいっそう大きく成長できそうな予感がします。工藤さん、顧問としてのこれまでもありがとう、そして取締役としてのこれから、ますますよろしくお願いします!

遠山:ますます期待してます、どうぞ宜しくね。

工藤:こちらこそ、よろしくお願いします!

【本件に関する報道関係者からのお問合せ】
株式会社スープストックトーキョー
PR担当:安藤、蓑毛(みのも)、平田、佐久間
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